【実録】新人VTuberの私が、二度と「フルトラ配信」をしない理由

皆さんは、VTuberの「フルトラ(全身トラッキング)」に憧れたことはありますか? 自分の手足の動きがそのままアバターに反映される。それは、本当の意味で「理想の自分」になれたような、魔法のような体験です。

でも、私はあの日を境に、すべての機材をクローゼットの奥に封印しました。 これは、ある新人VTuberが体験した、少しだけ「おかしな」夜の話です。

その夜、私は最新式の機材を手に入れた

私の名前は「ルル(仮名)」。半年前から個人勢として活動しています。 バイト代を貯めて、ついに最新式の全身トラッキング機材一式を揃えました。腰、両足、両手……計6箇所のセンサーを体に巻き付け、キャリブレーション(初期設定)を済ませた時、私は興奮の絶頂にいました。

💡 配信開始前
「……よし、完璧。これで今日の『3Dお披露目雑談』は最高になるはず!」

配信が始まった

夜の22時。配信開始のボタンを押すと、待機していたリスナーたちが一斉にコメントを流し始めます。

『ルルちゃん、3D化おめでとう!』
『動いてる!本当に生きてるみたいだ!』

私は画面の中の、フリルたっぷりの衣装を着た美少女アバターを動かし、カメラに向かって大きく手を振りました。

「みんな、見て見て!回るよー!」

スカートの裾をなびかせて、その場でくるりと一回転。 遅延はゼロ。私のステップに合わせて、アバターも軽やかに舞います。

異変の始まり

配信が始まって1時間。視聴者数も過去最高を記録し、テンションが上がっていた時でした。 コメント欄に、一通の妙な指摘が流れたんです。

『……ねえ、ルルちゃん。今、一瞬だけ「変な動き」しなかった?』

私は笑って返しました。

「えー?機材のバグかな?最新式なんだけどなー。ほら、ちゃんと動いてるよ?」

私は右手を上げました。アバターも右手を上げます。 私は左足を上げました。アバターも左足を上げます。

「ね?普通でしょ?……あ、でもちょっと腰のセンサーがズレたかも」

恐怖の瞬間

私は少し屈んで、腰に巻いたベルトを締め直そうとしました。 その時、画面を見たままの私は、全身の血の気が引くのを感じました。

画面の中の「私」は、屈んでいない。

アバターは、直立不動のまま。 ただ、右腕だけを真上に突き出し、不自然な角度でカクカクと振っています。

「えっ……待って、止まった?……みんな、画面止まってる?」

私が焦って立ち上がると、アバターも一瞬遅れて立ち上がりました。 でも、おかしい。 私の両手は、自分の胸元で震えているのに。 画面の中の彼女の右手は、まだ何もない空中を必死に掴もうとするように、激しく上下に動いているんです。

コメント欄が騒然となります。
『おい、今の何?』
『ルルちゃん、後ろ!後ろに誰かいるの!?』
『センサーが「何か別のもの」を拾ってる……?』

「やめてよ、みんな!怖いって……。えっ、何、これ……」

最悪の事態

私はパニックになり、機材を外そうと体に手をかけました。 すると突然、スピーカーから「ガリガリッ」という、爪で金属を引っ掻くような激しいノイズが響きました。

その瞬間。

画面の中の美少女が、ガクンと首を真後ろに折り曲げました。 カメラの向こう側ではなく、「私の部屋の、私の背後」を、アバターの瞳がじっと見つめたんです。

そして、スピーカーから聞こえてきたのは、合成音声ではない、 ボロボロに枯れた、老婆のような女の声でした。

『……ああ、やっと。……やっと、重なった。』

その声と同時に、私の背中が、氷を押し当てられたように冷たくなりました。 見ると、画面の中のアバターの腰から下から、「黒い霧のような腕」が何本も生え出し、アバターの体を内側から突き破ろうとしています。

センサーのログ画面が、異常な数値を叩き出していました。
【接続されているプレイヤー:2】

私は悲鳴を上げて、PCの電源コードを無理やり引き抜きました。 画面はブラックアウトし、部屋には静寂が戻りました。

その後

震える手で部屋の電気を全開にし、隅々まで確認しましたが、そこには私以外誰もいません。 でも、外したはずの腰のセンサーベルトが、なぜか「きりきり」と音を立てて、誰かに締め上げられているかのように食い込んでいたんです。

それ以来、私はフルトラ配信をしていません。 いえ、怖くて機材に触れることさえできません。

ただ、一つだけ気になることがあるんです。 あの日、電源を切る直前。

真っ暗になったモニターに映った、私の後ろ姿。 そこには、私と同じセンサーを全身に巻き付けた「何か」が、私と背中合わせに立っていたような気がしてならないのです。

皆さんも、中古の機材や、安すぎるセンサーには気をつけてくださいね。 それは、あなたの動きだけを読み取っているとは限らないのですから。

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